〜正真正銘のエコ住宅誕生!〜
日本では環境にやさしい住宅として「エコ住宅」がもてはやされていますが、ブラジルではこんなシンプルで画期的な「エコ住宅」が話題になっています。
◎ペットボトルでマイホーム実現
リオ・グランデ・ド・ノルテ州ナタル市から70キロ離れたエスピリト・サント市に建てられた46平方メートルの住宅。
実は、この住宅、砂とセメントとレンガ・・・ではなくて、ペットボトルを使用して作られました。発案者は電気技師のアントニオ・ドゥアルテさん。
個室2 部屋にリビング、キッチン、トイレとコンパクトにまとまった住宅は、ペットボトルが2700
本使われているそうです。
◎破格の値段、建築日数はわずか3日間
さて、この「エコ住宅」の気になるお値段ですが・・・何と、8000 レアル!
日本円にして約40 万円という金額はブラジルでも破格です。アントニオさんはさらに、低所得者層のために、住宅購入者がブラジル連邦貯蓄金庫ローンを使用できるよう配慮しています。
「セメントと砂とペットボトルで作ったブロックを使う。すべての型が揃っていれば、3 日間で家を
作れる。保証するよ」とアントニオさん。「どこでもペットボトルを見つけることができ、低価格を実現できる。僕たちの目的はこのアイデアを広げ、マイホームの夢を現実に変えてあげること。この家のローンは、家賃を払うよりずっと安いんだよ」。
◎強度も抜群、建築業界が注目
アントニオさんのアイデアはナタル市で特許を得ているほか、ペットボトルのブロックはリオ・グラ
ンデ・ド・ノルテ連邦大学で強度テストも受けています。
驚きなのは、通常のコンクリートのブロックは平均1.5 メガパスカルなのに対し、ペットボトルのブ
ロックは1.94 メガパスカル。コンクリートよりペットボトルの方が頑丈だという数値が出ているそう
です。
「最初はみんなに『風に持っていかれるぞ』と言われたけど、テストをして、エンジニアも契約して、この家は安全だということを確認したんだ」。
アントニオさんは、“ 低価格”、“ リサイクル” という要素のほか、“ 安全性” も強調、さらに、「レンガは熱を吸収した後、発散することができない。ペットボトルのブロックを使えば、家のなかはもっと涼しくなる」としています。
ペットボトルの「エコ住宅」には、建築業界も注目しているとのこと。地球温暖化対策の建材開発に時間と大金を注ぎ込まなくても、身近な廃品を再利用してマイホームを建てるなんて、これは面白いビジネスになりそうですね。
筆者 門脇 さおり 島根県出身。会社員。2 児の母。
<薬物・暴力追放へ!教育現場での取り組み>
「ブラジルの公立学校の子どもたちは、10 歳くらいになると、校内で麻薬と隣り合わせに生活するようになる」と、耳を疑うような噂が時々聞こえてきます。BRICs の一員、2014 年サッカーW杯や2016年リオ・オリンピック開催地として世界から注目を集めるブラジルとしては、ほうっておけない事実です。
あるまじき現実の声を一掃すべく、ブラジルの軍警Polícia Militar は教育現場でPROERD という計画を実施し、薬物・暴力の阻止に取り組んでいます。
◎薬物・暴力阻止への教育計画PROERD
P R O E R D はP r o g r a m aEducacional de Resistência às Drogas e à Violência の略で、日本語では「薬物・暴力阻止の教育計画」と訳すことができます。1983 年に米国で作成されたD.A.R.E. (Drug
Abuse Resistance Education) という計画が基になっており、’92 年にリオデジャネイロ州の軍警に、翌
年にはサンパウロ州でも導入されることになりました。現在はブラジル全土に拡大しています。
◎ PROERD の学校教育での実際
PROERD の最大の目的は、「薬物は怖いという意識を持たせ、誘惑に負けず、命の尊さを伝える」ということです。
学校現場での取り組みは、初等学校の1 年生~ 8年生を主な対象に、薬物や暴力の怖さを知るための講義が行われています。昨年までに幼稚園にもプロジェクトは拡大し、保護者の一人として授業を参観する機会がありました。
軍警と学校、家族が一体となってPROERD に取り組むこともねらいにあり、約4 ヶ月間、月
に数回研修を受けた警察官の出前授業が行われてきました。授業最終日には保護者も参加し、薬物の誘惑には「ノンNão!」と誓う子どもたちの姿を見守りました。授業を修了すると、園児たちには卒業証書が手渡されました。
警察官たちの子どもたちへの指導力は抜群で、授業の流れといい、テンポといい、名俳優さながらの演技力です。歌あり踊りあり、約1 時間の授業中、大人も子どもも講義に目が釘付けでした。指導に当たる警察官は志願者から選ばれ、勤務態度や社会活動の経験の有無のほかコミュニケーション能力や創造力なども審査され、プロの訓練を80 時間以上受けているとのことでした。
今後、PROERD の効果がより一層発揮されることが期待されています。
筆者 おおうらともこ
1979 年兵庫県生まれ。’01 よりサンパウロ在住。ブラジル民族文化研究センターに所属。子どもの発達に時々悩み、励まされる生活を送る。
<パサリニャー!!ブラジルの鳥を見に行こう!>
前回では純白が美しいダイサギを紹介しました。
ダイサギの捕食シーンを観察しようとするときっと忍耐勝負になるので、どうしたって他の水
辺の鳥たちも視野に入ってくることになります。
サンパウロのイビラプエラ公園におけるその代表は多分この鴨でしょう。
一目見て顔が白いのが最たる特徴で、それが和名にもなっています。例によって単刀直入ですけど。
そこへ来ると学名のほうがぐっと詩的で、この白い頭を見て、顔を隠すように白い布を被った「寡婦(未亡人ですね)」を想い、それがviduata になりました。かつて寡婦とは社会的にそ
んな立場だったのでしょうか。
ちなみにDendrocygna の方は、「木に縁る白鳥」という意味。
美しい白鳥も分類上は同じカモ科の鳥。水辺に暮らすこのカモが、意外にも集団で木の枝に泊まって休む習性があるためにつけられたのでしょう。
「リュウキュウ」は「琉球」です。どうしても場違いな印象を受けますが、これは同属別種の鳥がかつて琉球諸島で観察され、それを「リュウキュウガモ」と命名したためです。
現地名の「イレレー」は「聞きなし」で、夜間、しばしば都会の上空でも群れをなして飛び交うことがありますが、その時に発する声がきっとこんな風に聞こえます。
カモというと長距離に及ぶ渡りで有名です。気候の変化や、それに伴う食物の変化により、種によっては大陸間の渡りを苦もなくこなしますが、比較的近距離の「渡り」をする種もあり、あるいはかなり狭い範囲で渡りというよりは移動をする種もあります。
都会で見られるカモはそういった渡りの群れからは「落ちて」、地域内で繁殖もしてしまう、半ば「留鳥」化したものが多いようです。
ところでアンデルセンの「みにくいアヒルの子」、覚えていますか。
アヒルの家族に一羽だけ大きくて「醜い」ヒナが混じり、お母さんにまで呆れられ、いたたまれなくなって家出して一冬を過ごしたところ、白い羽に生え変わり、実は美しい白鳥だったというお話。
前述のように白鳥はカモの仲間で、アヒルも家禽とはいえ元はカモ。このお話は童話ではあるけれども、実は科学的な観察から生まれた節があるのです。
カモの仲間には「托卵」をする種があり、このシロガオリュウキュウガモもその一種。
托すのは同じカモ科の別種に限られるようですが、托す方は何気なく托し、托された方も特に違
和感もなくしっかりヒナを育ててしまうようで、そうなると白鳥が家鴨に育児を托すこともあるかも。
シロガオリュウキュウをジッと観察していると、白鳥のヒナが混ざっているかも知れません。
筆者 服部 敬也(はっとり ひろや)カンポグランデ在住
hiroya@terra.com.br
http://blogs.yahoo.co.jp/momotusmomota
<開業医のひとりごと>
〜今月のひとりごと『心と体は切り離して診られないだろうが』〜
そろそろ季節の変わり目です。毎日気温が変わり、雨が降ったり、暑かったり、寒かったり、鬱陶しいお天気です。「鬱陶しい」とは「晴れ晴れしない」のほかに「気分が重苦しい」意味がありますね。今回はこの「うつ」について考えてみます。医学で「鬱」が分類されるのは精神および行動の障害で、いわゆる精神科領域です※ 1。
『うつの分類については心の病気であるとか脳の病気であるとか、生物的成因や心理的成因など現時点でも諸説あるが、簡単に分けると、躁鬱病(最近では双極性感情障害と呼ばれる)のようなかなり重篤な症状がでるものと、ストレスや自律神経失調症に関連するうつ状態に分類できると思う。前者の有病率※ 2 は日本人で約2%であるが、実は病態があまりにも広範囲にわたるので調査しにくい後者が圧倒的に多い(一般人口の25%という調査もある)。ところが日本ではうつ=
精神科=きちがい科という構図ができあがっていたので、後者の「ちょっとした」うつ状態ではなかなか精神科を受診できなかった・しなかった・したくなかった。それで1996 年から「心療内科」なるものが標榜できるようになったのだな。この名称は日本にしか存在しない。一部の「専門家」からは心身症を治療する内科で精神科ではないといってるが、この科だったらかかりやすいのであればいいじゃないの?』
地域医療や一般内科の診療の実態ではうつ状態※ 3 がよく見られます。最近の生活状況ではストレスになることが多かったり、あるいはそのために自律神経失調症などになるためではないかと思われます。そのため、単なる風邪のような身体的症状を訴えて来られても精神面も診る必要があると筆者は考えます。反対に精神的症状をきたす器質的疾患※ 4 もあるので、一概に精神病であるとは言えません。精神的症状がある場合、必ず器質的原因を除外した上でしか精神障害とは診断できません。器質的疾患であれば、原因を治療すれば(可能であれば)うつ自体も良くなります。精神障害であれば、必要期間投薬したり、カウンセリングを受けたり、東洋医学的治療をしたり、いろいろアプローチができます。
『うつの症状※ 5 はつらい。日本人的に根性論で克服するのもいいけど、治療したほうが楽じゃないの?引きこもったりしてないで。とにかく症状が2 週間以上つづくようだとなにかがおかしいから医者に診てもらいましょう。』
※ 1 ①気分障害のうつ病;②神経症・ストレス性障害の不安うつ障害;③小児の行為および情緒の混合性障害の抑うつ性行為障害;④産褥に関連したうつ障害。
※ 2 有病率:ある時点で対象人口に見られる患者数。この場合100 人に2 人。
※ 3 一過性のストレス性障害(急性ストレス障害、適応障害、心的外傷後ストレス障害など)、自律神経失調症、パニック障害、恐怖症性不安障害、心気障害、心因性や内因性うつ、など。
※ 4 一番多いのが甲状腺疾患。副腎や副甲状腺疾患。脳血管障害。パーキンソン病。脳腫瘍。膠原病。重金属中毒。
※ 5 ①抑うつ気分(気分の落ち込み、いやな気分、空虚感、悲しさなど);②興味・喜びの喪失;③食欲や睡眠の増減
筆者 秋山 一誠 (あきやまかずせい)。
サンパウロで開業(一般内科、予防医学科)。この連載に関するお問い合わせ、ご意見は hitorigoto@oriente.med.br までどうぞ。
<ブラジルの民間療法>
~糖尿病に効果のある薬草~
糖尿病は、日本人にとって最も心配な病気のひとつではいでしょうか。データによれば、日本の糖尿病患者数は40 年間で約3 万人から約700 万人まで増え、糖尿病予備軍を含めると2000 万人に及ぶとも言われています。
ブラジルも日本に劣らず、2000 万人以上が糖尿病または糖尿病予備軍と言われています。
以下、ブラジルの民間療法において、糖尿病に効果があるとされる薬草を列挙します(学名および和名のわかるものは和名も載せました)。
Araçá-do-campo (Psidium guineense Sw.)
Avenca (Adianthum capillus-veneris) ホウライシダ
Bardana (Arctium lappa) ゴボウ
Carambola (Averrhoa carambola) スターフルーツ
Carqueja (Baccharis trimera)
Cedrela (Cedrela fissillis, Cedrela odorata) 樹皮を使う
Centeio Cecale cereale) ライムギ
Cipó-pata-de-vaca (Bauhinia smilacina) マメ科
Dente-de-leão (Taraxacum officinale) タンポポ
Gerânio (Gernium) フウロソウ
Gervão (Verbena bonariensis) ヤナギハナガサ
Grapiapunha (apuleia leiocarpa)
Jambolão (Syzygium jambolanum) アルコール抽出物や種子の粉末を利用
Jurubeba (Solanum paniculatum)
Erva-de-passarinho (Viscum rubrum, Struthantus flexicaulis Mart.)
Eucalipto (Eucaliptus globulus) ユーカリ
Inhame (Colocasia antiquorum) サトイモ
Laranja (Citrus auratium) 種を煎じる
Limão (Citrus limonum) レモン
Macela (Achyzoclyne satureioides)
Morrião-dos-passarinhos (Stellaria media) コハコベ
Nogueira (Juglans regiafolhas) シナノグルミ
Oliveira (Olea europea) オリーブ
Quebra-pedra (Phyllanthus corcovadensis) ブラジルコミカンソウ
Pau-ferro (Caesalpinia ferrea)
Pedra-ume-caá (Myrcia sphaerocarpa) 葉を使用
Pessegueiro (Prunun persica) モモ、葉を使う
Pata-de-vaca (Bauhinia forficata) 花と葉を使う
Pau-amargo (Pricasma palo-amargo)
Picão (Bidens pilosa) コセンダングサ
Romã (Punica granatum) ザクロ、皮と葉を使う
Rúcula (Eruca sativa) ルコラ
Sabugueiro (Sambuccus australis) ニワトコ、煎じる
Sucupira (Diplotropis incexis)
Tremoço (Lupinus albus) シロバナハウチワマメ、シロバナルーピン、1度に3 粒を粉にしたものを使う
Urtiga-vermelha, Urtigão (Urtica dioica)
Poáia-branca (Richardia brasiliensis) ブラジルハシカグサモドキ
非常に数が多いですから、今回は列挙するのみにとどめて、次回からこの中の主な薬草について解説していきます。
出典:IRMÃO CIRILO (Vunibaldo Körbes) “Plantas Medicinais”
(1971 年初版、現在第63 版を数えるロングセラー)
資料提供:Nassui Alimentos
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