2012年1月19日木曜日

木曜の男、襲われる。

みなさん、こんばんは。
今現在、サンパウロはヒドイ雨でございます。

そう、私が木曜の男、キタでございます。

出社する前に、家の近くのバールで一杯のコーヒーを飲む。
これが日課でございます。
こちらでは、お店の中では煙草は吸えない法律ですので、
コップを持ちながら店先で煙草を吸うのです。
今日は、どんな一日かなー。なんて思いを巡らせながら佇むのです。

右前方から、老婆が近づいてきました。
私の顔をみるなり、真っ先に近づいて、何やら語りかけてきます。
しかし、歯がない。入れ歯もしてないから、何を言ってるのかさっぱり分からない。

私が持っているコーヒーを指さしながら飲みたいと言う。
ちなみに、ホームレス風ではなく、ヨレヨレではあるけれども洗濯はちゃんとしているような、
清潔そうではある、おばぁちゃん。

「まぁ、病気の心配はないか。」と思い、コップを差し出す。
「まだ、入れたばかりだから、熱いよ。気をつけてね。」なんて思いながら見守る。
一口飲んでは口を離し、私の顔を確認し、
一口飲んでは口を離し、また私の顔を確認し・・・。



おいおい、何口飲むんだよ!!


まぁ、今日はちょっと寒いしね。仕方ないね。
そんなに、おれの表情が気になるなら、
おれはあっち向いて、煙草でも吸うよ。おばぁちゃん。

ただ、間接キスはイヤだから、コップのどこに口をつけたかだけは横目で確認させてね。

結局、半分以上一人で飲みやがりあそばされた。


まぁ、いいや。
うまかったかい?おばぁちゃん。
返されたコップを気づかれないように回して、残りのコーヒーを飲む。


これで終わると思うでしょ?




違った。




おばぁちゃん、私にものすごくお礼を行ってきた。
De nada. ジ・ナーダ (どういたしまして。)
と答えるも、まだ何か言っている。


「ウチに来い。」


どうやら、そんな事を言っている。
おもてなしする。おまえはイイ奴だ。イイ男だ。ウチに来い。
って言っている。

Não obrigado. ナォン オブリガード (いいよ。ありがとう。)

って答えるも、しつこく誘ってくる。

Não obrigado.と私は連呼する。

今から仕事なんだよ。おばぁちゃん。
どうやら、あきらめたらしい。

よかった。


ホッとした。


これで開放されると思った。

しかし、おばぁちゃんは両手を広げてハグをしようと訴えかけてくる。
まぁ、こっちの挨拶だ。私の左頬とあなたの左頬をくっつけて、
耳元でキスの音を鳴らす。
これは、こっちの異性同士の挨拶だ。出会いと別れには必要なのだ。

そう思って顔を近づけたら、

おれの頬にぶっちゅーって・・・。

うん。でもまだ、大丈夫。
これは挨拶の範疇。
とっても親しい間柄の範疇。
おばぁちゃんは、おれを息子のように思ってくれたんだね。
ありがとう。


顔を離したら、
まだ、腕を放さない。

あぁ、今度は逆の頬なんだね。
わかったよ。あなたは、きっとリオデジャネイロかどこかの出身なんだね。
両方しないと気がすまないんだね。


しかし、おばぁちゃんは、
顔を正面に向けたまま、迫ってくる。
あごを上げて迫ってくる。
眼も少し、閉じ気味だ・・・。
私の首の後ろに手を回して、どこからそんな力が出るんだ?って言う位の力で、
私を引き寄せる。

接吻ですか?


口と口で接吻と言うやつですか?



こんな展開は予想だにしていなかった。



もう、全力で拒否。


でもですね、力強いんですよ。予想以上に。
おばぁちゃんの骨が折れそうだから、こっちも抵抗の力加減が分からんのですよ。

おばぁちゃん。お願いだから口閉じて。口を開けたまま迫って来ないで。
舌をチロチロしないで。いや、入れ歯ないのは分かるけども。

いーーーやーーーーっ!!!






























やーめーてーっ!!


なんとか、その場を逃げようと、
店員にコップを返そうと店内を振り返った所、
出勤前のブラジル男性人達と店員全員が私をニヤニヤしながら、見ている。

後ろからは、おばぁちゃんが娘の名前を何人もだして婿に来いとか言っている。
おいおい、じゃぁ、キスしようとするんじゃねぇーよ。


んで、おい店員め、おれは毎日来てるだろ。
常連なんだから、助けろよ!
一緒に笑ってんじゃねぇ!
「捕まったわね。ふふ。」じゃねぇっ!


コップを返し、走るように店を出る。

実に、素晴らしい一日の始まりとなりました。

そして、一句を詠ませていただきます。

  おい、嫁よ。

    貞操、必死に、

       守ったぞ。

おれ、偉い!!
じゃ、また木曜日に会いましょう。



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